コーヒーのマナーには、正しい出し方、カップのセットの仕方など、コーヒーをお出しするときの接客マナーと、コーヒーをいただくときの飲み方のマナーがあります。
本記事では、正しいコーヒーの出し方や「アメリカ式」「イギリス式」などのカップのセットの仕方、コーヒーの飲み方のマナーなどを、分かりやすくご紹介します。
接客マナーにおいて、大切なのは「おもてなしの心」です。飲む人(お客様)の失礼にならないように、コーヒーに関するマナーの基本をマスターしておきましょう。
コーヒーの出し方
ホットコーヒーの場合は、あらかじめコーヒーカップにお湯を注いで温めておくと、コーヒーが冷めてしまうのを防ぐことができます。
アイスコーヒーの場合も、あらかじめグラスを冷やしておくと、余分に氷が解けないため、濃度を保ちやすくなります。
コーヒーの量は、コーヒーカップ又はグラスのギリギリまで入れるとこぼれやすくなりますので、7~8分目を目安に、コーヒーを注ぐようにします。
複数のコーヒーを運ぶときは、お盆にソーサーを重ねて持っていき、コーヒーを出す直前にカップ、スプーン、砂糖やミルクなどをセットしてお出しします。
万が一、こぼしてしまったときのために、清潔な布巾も一緒に持ち運ぶようにします。
コーヒーは、右後方から「どうぞ」と声をかけてから、両手でテーブルに置くようにお出しするのが基本です。
ただし、後方からお出しするのが難しい場合は「前から失礼いたします」と声をかけ、前からお出ししましょう。
コーヒーカップの置き方(セッティング)
コーヒーカップに絵柄が入っている場合は、その絵柄が見やすいように、絵が描かれている正面が、飲む人(お客様)に向くようにお出しします。これが基本です。
無地のカップや総柄で正面が分からない場合は、カップの取っ手(持ち手)の位置が基準になりますが、それには大きく分けて「アメリカ式」と「イギリス式」の2つのスタイルがあります。
なお、以下のコーヒーのセッティングのマナーは右利きを前提にしています。左利きの場合は、その逆になります。
取っ手が右の「アメリカ式」

出されてすぐに飲めるように取っ手を右に向けて出すのが、「アメリカ式」です。
砂糖やミルクを入れずに、ブラックで飲むことが多いアメリカ人ならではの合理性によります。
取っ手が左の「イギリス式」

砂糖やミルクをスプーンでかき混ぜる際、左手で取っ手を押さえてカップを安定させるために左に向けて出すのが、作法を重んじる「イギリス式」です。

砂糖やミルクを入れ、左手で取っ手を押さえ、右手でスプーンを使ってかき回した後、スプーンをカップの向こう側に置き、取っ手をぐるっと右に回して、右手で持って飲みます。
昭和の時代からの「儀式」
取っ手が左の「イギリス式」の、持ち手をぐるっと右に回してから飲む「儀式」は、日本では、コーヒーを飲むときの正式な作法として、昭和の時代から広く認識されてきました。
今でこそ、コーヒーをブラックで飲むことが、当たり前のような時代になりましたが、それは、昔と比べて現在のコーヒーは品質が高く、ブラックで飲んでおいしいからです。
ひと昔前(昭和)の喫茶店では、コーヒーに砂糖やミルクを入れて飲むことが当たり前でしたし、砂糖やミルクを入れて飲むことを前提にした、焙煎深めのロブスタブレンドなども多く見られました。
「スペシャルティコーヒー」の概念は、1970年代にアメリカで誕生し、日本に広がり始めたのは1980年代後半からで、昭和の喫茶店では、コーヒーに砂糖やミルクを入れて飲むことが多かったのです。
日本では、昭和の時代から多くの喫茶店が、砂糖やミルクを入れて飲むことを前提にした、カップの取っ手を左側にして出す「イギリス式」を採用していますが、現在の日本の高級ホテルやレストランなどでは、カップの取っ手を右側にしてお出しする「アメリカ式」が主流となっています。
スプーンや砂糖とミルクの置き方(セッティング)
スプーンはソーサーの上に、柄の部分が右にくるように、コーヒーカップの手前に置きます。
スティックタイプの砂糖は、スプーンと一緒に揃えてソーサーの上に置きます。
小分けタイプのミルクや角砂糖なども、ソーサーの上に置きますが、スプーンの手前か、左側の空いているスペースに置きます。
人数が多い場合には、別の小鉢やカゴなどに砂糖やミルクをまとめて入れ、テーブルに置いて、自由に使ってもらう方法がスマートです。
アイスコーヒーの出し方

アイスコーヒーを出す場合は、水滴でテーブルが濡れないように、最初に正面にコースターを置き、コースターの中心にアイスコーヒーの入ったグラスを置きます。
この時、口をつけるグラスの上の部分を持つのはNGです。必ず、グラスの下3分の1の部分を持つようにします。
ストローは、グラスの右横に縦にして置くか、横向きにして手前に置きます。
最後に、ミルクやガムシロップをグラスの右横に添えます。
人数が多い場合には、ミルクやガムシロップを、小鉢やカゴにまとめて入れてお出しし、ストローの空袋やミルク、ガムシロップの空容器は、専用のカゴなどに入れてもらうようにすれば、テーブルの上が散らからずに済み、とてもスマートです。
お菓子やケーキの出し方
コーヒーと一緒に、お菓子やケーキなどを出す場合には、先にお菓子やケーキを正面に出した後に、右側にコーヒーをお出しします。
チーズケーキなど、三角形のケーキをお出しする場合は、尖っているほうが左側にくるようにお出しします。
おしぼりを一緒に出すときの順番は、飲む人から見て左側にお菓子やケーキ、真ん中にコーヒー、右側におしぼりの順にお出しします。
先に出したものの上を越えて、次のものを出すことを「袖越し」と言って、マナー違反になりますので、注意する必要があります。
コーヒーの飲み方のマナー
カップの取っ手が左側の「イギリス式」の場合、カップに砂糖やミルクを入れ、左手で取っ手を押さえ、右手でスプーンを使ってかき回した後、スプーンをカップの向こう側に置き、取っ手をぐるっと右に回して、右手で持って飲みます。
スティックタイプのシュガーが主流となった現在では、「角砂糖」は、昔ながらの喫茶店でも、見かけることは、ほとんどなくなりましたが、直接カップに入れるとコーヒーが飛び散る恐れがありますので、スプーンの上にのせて、そっとそのままスプーンを沈めて溶かすのがマナーです。
混ぜるときは、カップにスプーンが当たる音をさせないように注意します。
コーヒーカップに、スプーンを入れたままコーヒーを飲むのはNGです。スプーンは、必ずカップから出してコーヒーを飲むようにしましょう。
使用後のスプーンはソーサーの上に置きますが、飲むときの邪魔にならないように、カップの向こう側に置くようにします。
使用した砂糖やミルクの空容器は、コーヒーカップの向こう側に置くことで、テーブルを汚さずに済みます。
立食形式の場合は、ソーサーを持ちながらコーヒーをいただきます。
まとめ
マナーというのは、カップの持ち手は右か左かなど、どちらが正しいということではなく、飲む人やその時の状況に合わせて、臨機応変に使い分けることが大切です。

ひと昔前とは違い、良質のコーヒーをブラックで飲むことが、当たり前となった令和の時代では、
- 基本的には絵柄のある方を正面とし、無地のカップや総柄で正面が分からない場合は、出されてすぐに飲めるように、カップの取っ手(持ち手)を右に向けて出す。
- スプーンはソーサーの上に、柄の部分が右にくるように、コーヒーカップの手前に置く。
というのが、今の時代の一般的なコーヒーカップの置き方(セッティング)ではないでしょうか。
基本のマナーを踏まえた上で、利き手や飲み方(ブラックで飲むか、砂糖やミルクを入れて飲むか)など、飲む人やその時の状況に合わせて、臨機応変に使い分けることが大切です。


