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エチオピアのコーヒーセレモニー「カリオモン」ジャバナを使ったコーヒーの入れ方

豆知識

コーヒー発祥の地としても知られるエチオピアには「カリオモン」と呼ばれる、日本の茶道にもよく似た「コーヒーセレモニー」があります。
本記事では、このコーヒーセレモニー「カリオモン」の流れや、ジャバナを使ったエチオピア式コーヒーの淹れ方などを、分かりやすく紹介します。
エチオピアのコーヒーセレモニー「カリオモン」のことを知りたい、自宅でエチオピア式のコーヒーを淹れてみたい、という方の参考になれば幸いです。

エチオピア

エチオピア国旗
エチオピア国旗

アフリカ大陸の北東部に位置するエチオピアは、アラビカ種の原産地で、現在も野生種が自生しています。

・エチオピア連邦民主共和国
・首都はアディスアベバ
・国土面積は109.7万平方キロメートルで日本の約3倍

国土の大部分がアビシニア(エチオピア)高原を中心とする高地で、首都アディスアベバも標高2355mに位置する高原都市となっています。
高原地域は農業に適しており、高標高が生み出す寒暖差、適度な雨量や肥沃な土壌などコーヒーの栽培に適した環境が整った地域が、数多く存在しています。

南西部のカファ(Kaffa)地方で、初めてアラビカ種が発見されたことから、カファの名がコーヒーの名の由来とする説もあります。

アラビア半島(イエメン)にあった、かつての港「モカ港」から出荷されたことに由来して、イエメンとエチオピアの2国で生産されるコーヒーを「モカ」と呼びます。
「モカコーヒー」は日本でも人気ですが、そのフルーティーで華やかな香りとコク、上品な酸味から「コーヒーの貴婦人」と呼ばれることもあります。日本のみならず世界中で愛されています。

コーヒー生産国(特にアフリカ)において、コーヒーは、そのほとんどが輸出用で、国内では、ほとんど消費されていないのに対し、エチオピアでは、コーヒー生産国としては珍しく、生産量の約半分が国内で消費されています。
エチオピアの人々にとってコーヒーは、日常の生活に欠かせないものとなっています。


コーヒーセレモニー「カリオモン」

コーヒーセレモニー「カリオモン」

エチオピアには「カリオモン(Kariomon)」と呼ばれる、日本の茶道にもよく似た「コーヒーセレモニー」があります。
客人の前で生豆を煎るところから始め、臼と杵で豆を摺り潰して、ポットで直接煮出して提供します。3杯飲むことが正式であることから、2時間以上かかることもあります。

このセレモニーは、家庭の主婦や娘たち女性がとり行うもので、エチオピアでは結婚前の女性が身につけるべき作法の一つとされています。
家族や友人、来客などに、コーヒーを振る舞うこの伝統は、コミュニケーションの場をつくる重要な役割を果たしています。

首都アディスアベバの大統領宮殿内には、1956年にハイレ・セラシエ皇帝によって造られた日本庭園があり、2013年4月にはこの庭園の修復完成を記念する式典が行われ、ギルマ大統領(当時)も出席した。同庭園には、1960年に上皇上皇后両陛下が皇太子同妃両殿下時代に訪れた他、2006年に小泉総理(当時)が、2014年には安倍総理が訪れた。同庭園には、茶室とコーヒーハウスの二つの建物があり、日本の茶道及びエチオピアのコーヒー・セレモニーを行うことができる。

引用元: 外務省ホームページ.https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ethiopia/data.html#section6.エチオピア基礎データ.参照 2025-10-26

コーヒーセレモニー「カリオモン」の流れ

古くから伝わるコーヒーの飲用方法が、現在でも日常的に行われているのが、エチオピアのコーヒーセレモニー「カリオモン」です。
日本の茶道にも通じる、そのおもてなしの作法は、以下のような手順で行われます。

1.青草を敷き、道具類を並べて、乳香(にゅうこう)を焚く
…お香を焚いて、空間を整え、おもてなしの準備をする。

2.生豆を水で洗う
…米を研ぐように何度か水を換えて、生豆を擦るようにして銀皮(シルバースキン)を取り除く。

3.生豆を煎る
…炭火の上で10分ほどかけて、黒く光るように煎り上げる。

4.芳香を楽しむ
…鍋ごとカラカラ振って客の間を一巡する。

5.茶菓子を楽しむ
…おつまみとして、ポップコーンなど手作りの菓子を客に勧める。

6.湯を沸かす
…おしゃべりをしながら待つ。

7.豆を粉末にする
…木臼に煎った豆を入れ、棒でついて粉にする。

8.粉をポットに入れ、煮出す
…沸騰してから、弱火で4~5分ほど煮出す。

9.沈殿させる
…ジャバナを注ぎ口のほうに傾けて置いて、粉を底に沈める。

10.カップに砂糖を入れて、コーヒーを注ぐ
…小さなカップ(シニー)に、砂糖を小さじで2杯くらい入れる。一般の家庭では、塩やバターを入れて飲む人も多い。
沈殿した粉が混入し過ぎないよう、コーヒーをゆっくりと注ぐ。香りづけに、薬草をいれる。

コーヒーセレモニーでは、3杯飲むのが正式な作法で、1杯目の後に、継ぎ湯をして2杯目、3杯目を出します。
「最初の1杯目は健康のため、2杯目は愛のため、3杯目は祝福のために供される」というエチオピアの格言があります。


エチオピア式コーヒーの淹れ方

エチオピア式のコーヒーでは、「ジャバナ」という素焼きのコーヒーポットに、直接コーヒー粉を入れてコーヒーを抽出します。
自宅で、ジャバナを使ったエチオピア式コーヒーを、以下の手順で抽出します。

今回使用する道具類

ジャバナ
ジャバナ

素焼きのコーヒーポット「ジャバナ」
…ジャバナがない場合は、ヤカンでも代用できます。

エチオピアのコーヒー(ブンナ)を淹れるためのコーヒーポットであるジャバナは、地域や民族によりいくつかのスタイルがありますが、こちらはエチオピア中部のグラゲ民族式スタイルのジャバナです。

粉を沈殿させるために底が丸いジャバナには、ジャバナ置き(マトット)は必需品です。
煮出したコーヒーを温かいまま保つために、小さな栓で蓋をします。

購入したジャバナを、実際にコーヒーポットとして使用する場合は、最初に目止め(土の目を埋めて水漏れや汚れの染み込みを防ぐための処理)が必要です。

【参考】目止め(米のとぎ汁を使った煮沸)の手順
1.最初に、ポットのほこりなどを中性洗剤と柔らかいスポンジで軽く洗い流します。
2.ポット全体が入る大きさの鍋に、ポットが完全に浸るくらいの水を入れます。
3.鍋に米のとぎ汁を加えます。
4.鍋を弱火にかけ、沸騰直前の状態を保ちながら30分ほど煮沸します。
5.火を止めた後、鍋に入れたままの状態で、完全に冷めるまで放置します。
6.冷めたらポットを取り出して、水でとぎ汁をきれいに洗い流します。


豆煎り器
豆煎り器

コーヒー豆煎り器

本来は、平たい鉄鍋でコーヒー豆を煎りますが、今回は豆煎り器で代用します。


カセットコンロと五徳
カセットコンロと五徳

カセットコンロとアルコールバーナー五徳

本来は、炭火を使いますが、今回はカセットガスコンロで代用します。
ジャバナは底が丸いので、アルコールバーナー用の五徳の上にのせて火にかけます。

今回のレシピ(抽出条件)

・エチオピア産の生豆約50gを、フルシティ~フレンチくらいに焙煎する。
(生豆に銀皮がほとんど付いていないので、生豆は洗いません。)
・焙煎後の豆約40gを、細挽きのコーヒー粉にする。
・水550㏄をジャバナに注ぎ、コーヒー粉を入れて、煮出す。
(今回は、砂糖、塩や薬草などは使用しません。)


今回の抽出手順

エチオピア式コーヒーの抽出手順を5つのステップに分けて、解説します。

生豆を煎る
生豆を煎る

ステップ1.
生豆を煎る。

コンロの上で、豆煎り器を振って、10分ほどかけて、黒く光るように煎り上げます。
焙煎直後の芳香を楽しみます。

焦げた豆や色の薄い豆は、味が悪くなるので取り除きます。


粉をポットに入れる
粉をポットに入れる

ステップ2.
粉をポットに入れる。

水550㏄を入れたジャバナに、フルシティ~フレンチくらいの細挽きのコーヒー粉約40gを入れます。

今回は、コーヒーミルを使って、細挽きのコーヒー粉にしました。


煮出す
煮出す

ステップ3.
煮出す。

カセットコンロを使って、アルコールバーナー用の五徳の上に、ジャバナをのせて火にかけます。

沸騰してから、弱火で4~5分ほど煮出します。


沈殿させる
沈殿させる

ステップ4.
沈殿させる。

ジャバナ置き(マトット)に、ジャバナを注ぎ口のほうに斜めに置いて、コーヒー粉を底に沈めます。

落ち着くまで3分ほどかかります。


コーヒーを注ぐ
コーヒーを注ぐ

ステップ5.
コーヒーを注ぐ。

小さなカップ(シニー)に、コーヒーをゆっくりと注ぎます。

今回は、砂糖、塩や薬草などは使用しません。


出来上がりのカップ
出来上がりのカップ

出来上がりのカップ

見た目は濃く見えますが、焙煎直後だからなのか、見た目よりも、あっさりとした味わいです。

コーヒー粉が沈殿するため、ザラザラとした食感があります。

カップ3杯目
カップ3杯目

カップ3杯目

3杯目は、かなり味が薄くなります。


まとめ

ジャバナとエチオピア式のコーヒー
ジャバナとエチオピア式のコーヒー

アラビカ種の原産地としても知られるエチオピアには「カリオモン」と呼ばれる、日本の茶道にもよく似た「コーヒーセレモニー」があります。

家族や友人、来客などに、コーヒーを振る舞うこの伝統は、現在でも日常的に行われ、コミュニケーションの場をつくる重要な役割を果たしています。

ジャバナがなくても、ヤカンで代用すれば、誰でも、エチオピア式のコーヒーを、自宅で淹れることができます。

エチオピアのコーヒーセレモニー「カリオモン」を、生豆を煎る所から体験することで、コーヒーの楽しみ方がさらに広がります。



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