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抽出の原理と様々な抽出方法|おいしいコーヒーが飲みたい人へ

抽出

同じ抽出方法でも、わずかな条件の違いによって、出来上がるコーヒーの味が変わることは珍しくありません。
この記事では、そういった「コーヒーの味が変わる要因」が何なのかを、きちんと理解することで、いつでも自分の好きな味をつくれるようになることを目指しています。
自分にぴったりのコーヒーを見つけるための、ヒントになれば幸いです。

おいしいコーヒーとよいコーヒー

コーヒーは嗜好品である以上、「おいしい」と感じるか「まずい」と感じるかは人それぞれで、飲んだその人の好みによります。

したがって、「おいしいコーヒー」は、人それぞれなので、定義づけることはできませんが、「カフェバッハ」の田口護氏が提唱した「おいしいコーヒーとよいコーヒー」という考え方によると、「よいコーヒー」は、次のように定義づけることができるといいます。
なお、下線は引用者によります。

「よいコーヒー」とは、《欠点豆を除去した良質な生豆を適正に焙煎し、新鮮なうちに正しく抽出されたコーヒー》と定義づけることができる。

引用元: 田口護.田口護の珈琲大全.NHK出版,2003,67p.

そして、「よいコーヒー」であっても、飲む人の好みによっては必ずしも「おいしいコーヒー」になるとは限らないが、「悪いコーヒー」は必ず「まずいコーヒー」になる(健康面から考えても駆逐されるべきである)といいます。

コーヒーのプロたる者が、まず優先すべきなのは、個人の嗜好の問題である「おいしい・まずい」よりも、客観的に評価できる「よいコーヒー」の提供を心がけることであるといいます。

この記事では、この客観的に定義づけられた「よいコーヒー」の条件のうち、「正しく抽出されたコーヒー」に焦点を当てて、詳しく解説します。


抽出とは?

焙煎されたコーヒー豆は、「コーヒーミル(コーヒー豆の粉砕機)」で挽いて、小さく砕いた後、その中の成分を、お湯や水に溶かし出します。
この工程が「抽出」です。

色や味、香りの成分が新しく生まれる「焙煎」工程とは違い、「抽出」工程では、特に新しい成分が生み出されるわけではありません。

しかし焙煎豆に含まれる数多くの成分の中から、どの成分がどれだけ出てくるのかのバランスによって、出来上がるコーヒーの香味は変わってきます。

ドリップ、フレンチプレス、サイフォン、マキネッタ(直火式エスプレッソ)などいろいろな抽出方法がありますが、それぞれ専用の器具や機械を使って行うため、この成分バランスにも違いが生じます。


抽出の原理

抽出の原理を学ぶ

同じ抽出方法でも、わずかな条件の違いによって、どの成分がどれだけ出てくるのかのバランスが変わり、出来上がるコーヒーの香味が変わってくることは珍しくありません。

ここでは、そういった「味が変わる要因」が何なのかを、きちんと理解することで、いつでも自分の好きな味をつくれるようになることを目指します。

コーヒーの味を変える要因

  1. どんなコーヒーを使うか
  2. どんな水を使うか
  3. 湯の温度
  4. 粉の挽き具合
  5. 湯と粉の接触時間
  6. 湯と粉の比率

1.どんなコーヒーを使うか(生豆、焙煎度などの要因を含む)

2.どんな水を使うか
例えば、「PH」がアルカリ性の水(お湯)を使うと、コーヒーの酸味を中和して、よりまろやな味わいになります。

水質を示す代表的な指標には、「硬度」と「PH」があります。
日本の水道水は、地域によって異なるものの、硬度は「軟水」、PHは「ほぼ中性」なので、コーヒーの抽出にも適しています。

3.湯の温度
お湯の温度が高くなるほど、より濃くなり、より香りが強く出ます。

4.粉の挽き具合
粒度が細かくなるほど、より濃くなります。特に微粉の影響は大きく、味が重たくなりがちです。
また、「湯と粉の接触時間」にも影響してきます。

5.湯と粉の接触(抽出)時間
時間が長くなるほど、より濃くなります。

6.湯と粉の比率
粉の量が多くなるほど、より濃くなります。


成分抽出の3つの過程

コーヒーの抽出は、抽出される成分の「粉内部での移動」、「お湯への移行」、「ろ過」の3つの過程から成り立っていると考えられます。

粉内部での移動

コーヒーの成分は、お湯の浸透に伴って、粉の内部から表面へ移動します。酸味は速く抽出され、味の重たい成分が後に出てきます。

成分成分の移動味を変える要因の影響
酸味成分成分の移動は速く、短時間で出きってしまうお湯の温度、挽き方、抽出時間の影響をあまり受けない
苦味成分成分の移動は速いものから、遅いものまで様々で、遅いものほど渋みを伴った重い口当たりになる遅いものほど、お湯の温度、挽き方、抽出時間の影響を受けやすい

お湯への移行

粉の表面に達したコーヒーの成分が、お湯に移行していきますが、これは粉内部での移動に比べて、圧倒的に速く進みます。
したがって、コーヒーに含まれる成分の抽出は、粉の内部から表面への移動に大きく依存しています。

ろ過

ろ過については、抽出方法によって、その影響が異なってきます。


ラピス
ラピス

酸味は、短時間(1分ほど)で出つくすので、コントロールは難しいのですが、苦味は、湯温、挽き方、時間を変えることによって、質、量ともに変えることができますので、苦味をコントロールすることで、バランスをとるようにします。


様々な抽出方法

透過法と浸漬法

ラピス
ラピス

コーヒーの抽出方法は様々ですが、その基本原理から「透過(とうか)法」と「浸漬(しんし)法」の2つのタイプに大別されます。

「透過法」とは、コーヒー粉で層を作り、そこにお湯を通過させて、成分を引き出す抽出方法です。お湯と粉の触れ具合によって抽出される成分の種類や量が変わるため、抽出技術によって味に違いが出ます。代表的な方法としては、ペーパードリップ、ネルドリップなどがあります。

「浸漬法」とは、コーヒー粉と抽出に使うお湯を一度に混ぜる(お湯に粉を浸す)ことで、成分を引き出す抽出方法です。お湯と粉の触れ具合を安定させやすいため、抽出技術による味の違いは少ない方法です。代表的な方法としては、フレンチプレス、サイフォンなどがあります。


ペーパードリップとネルドリップ(透過法)

ペーパードリップの特徴は、紙のフィルターを使用し、雑味が少なく、クリアな味わいに。抽出時間やお湯の温度で味が変化しやすく、手入れは簡単です。

ネルドリップの特徴は、布のフィルター使用し、まろやかで深みのある味わいに。抽出に技術が必要で、ネルの手入れや保存に手間がかかります。

フレンチプレスとサイフォン(浸漬法)

フレンチプレスの特徴は、金属フィルターを使用し、オイル分も抽出します。コクが強く、ボディ感のある味わいに。

サイフォンの特徴は、見た目も美しく、理科実験のような抽出器具で、すっきりした味わいで香りが際立ちます。


まとめ|好みの味を探してみよう

同じコーヒー豆を使っても、淹れるたびに味が変わり、なかなか自分好みの味にたどり着けないことがあります。
最高の1杯に出会うために、コーヒーを淹れるときには、この記事で学んだ、お湯の温度、挽き方、抽出時間、粉の量などの「味を変える要因」を1つずつ変えて、試してみましょう
同じ豆を使っても、また新しい味わいを発見することができる楽しみだけでなく、さらに自分好みの味に1歩づつ、近づくことができるでしょう。



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