洋の東西を問わず、古くから、コーヒーは多くの人を魅了してきました。
本記事では、ナポレオンやバッハ、ベートーヴェンらコーヒー好きの偉人たちのコーヒーにまつわる興味深いエピソードを紹介します。
コーヒー好きの偉人たちとコーヒーにまつわるエピソード
ナポレオン
軍隊に初めてコーヒーを取り入れたとされる、ナポレオン・ボナパルト(フランスの皇帝)は、流刑されて、最後を迎えることになったセントヘレナ島でも、毎食後に欠かさずコーヒーを飲んでいたといわれています。
亡くなる数日前にもコーヒーが欲しいと主治医に訴え、スプーンに数杯のコーヒーを飲む許可を取り付けたといいますから、相当なコーヒー好きだったことは、間違いありません。
ナポレオンには、「1日の睡眠時間が3時間」という有名な逸話も残っており、その源はやはり、コーヒーだったのではないでしょうか。
バッハ

「音楽の父」と呼ばれている、バッハ(ドイツの作曲家)が作曲した声楽曲「コーヒー・カンタータ」では、「コーヒーって、なんておいしいんでしょう。マスカット・ワインよりなおソフトだわ」と歌うコーヒーにとりつかれた娘と、コーヒーを何とかしてやめさせようとする父とのかけ引きが描かれています。
バッハの遺産の中に、5つのコーヒー・ポットやカップ類が含まれていたのをみると、バッハが相当なコーヒー党であったことは、間違いありません。
ベートーヴェン

「運命」や「第九」など誰もが知る数多くの名曲を残した、ベートーヴェン(ドイツの作曲家)は、1杯のコーヒーに使用する豆の数を「60粒」と決めて、正確に数えて淹れていたといいますから、コーヒーには相当に強いこだわりがあったことがうかがえます。
◎ここで気になったので、コーヒー豆60粒は、何グラムなのか?
実際にはかってみました。

豆の大きさにもよりますが、コロンビアスプレモのシティローストで、約9グラムでした。

やや小粒のエチオピア・イルガチェフG1のハイローストで、約8グラムでした。
焙煎度や抽出量にもよりますが、この豆の量(60粒)だと、少し薄めのコーヒーになりそうですね。
ベンジャミン・フランクリン
アメリカ合衆国建国の父の一人として知られるベンジャミン・フランクリン(アメリカの政治家・科学者)は、多彩な顔を持つ人物ですが、彼は副業としてコーヒーの小売販売を行っていたといいますから、本人も相当なコーヒー好きだったのではないでしょうか。
フランクリンは、頻繁に通ったコーヒーハウスを「アイデアの市場」と呼んで、知的交流の場として活用するとともに、コーヒーを「知的活動の触媒」と見なして、創造性を高める手段として愛用していました。
こうして見ると、彼の異才は、コーヒーの効用が引き出したものなのかもしれませんね。
セオドア・ルーズベルト
第26代アメリカ大統領である、セオドア・ルーズベルトの執務室には、常に大きなコーヒーポットがあったと伝えられています。
セオドア・ルーズベルトは、「1日に1ガロン(約3.785リットル)ものコーヒーを飲んでいた」という有名なエピソードがありますが、これは歴史的な事実というよりは、彼のコーヒーへの熱愛ぶりを示す比喩的な表現であると思われます。
ただ、彼がたくさんのコーヒーを好んで飲んでいたことは事実であり、その習慣が彼のエネルギーの源であったとも考えられます。
バルザック
19世紀のフランスを代表する小説家、オノレ・ド・バルザックは、夜遅くから長時間にわたる執筆活動を行う集中力を保つために、「1日に50杯以上のコーヒーを飲んでいた」というエピソードが広く知られています。
バルザックが、実際にコーヒーを何杯飲んでいたかはともかく、彼のコーヒーへの依存度と、執筆への情熱を示すエピソードとして受け止められています。
彼が残した名作の数々も、「コーヒーの力」なくしては、生まれなかったかもしれませんね。
ヴォルテール
フランスの哲学者である、ヴォルテールもまた、「1日に50杯以上のコーヒーを飲んでいた」というエピソードの持ち主です。
彼は医師から、コーヒーの飲みすぎは体に悪いと忠告されましたが、「こんなにコーヒーを飲んでいるが、私は元気だ」と反論し、83歳まで長生きしました。
コーヒーをこよなく愛する人たちにとって、なんとも心強いエピソードではないでしょうか。
ヘミングウェイ
「誰がために鐘は鳴る」や「老人と海」などで知られるアメリカの小説家、ヘミングウェイには、酒豪伝説的なエピソードは数多くありますが、コーヒーについての逸話は多くありません。
イタリア・トリノで1763年創業の歴史あるカフェ「Bicerin (ビチェリン)」に足繁く通い、その店名を冠したチョコレートコーヒー「ビチェリン」を愛飲したという逸話が残っています。
エスプレッソとチョコレートとクリームをミックスして作るこの「ビチェリン」というドリンクを「世界で残すべき100のもの」の一つに選んだと言われています。
まとめ
世界の偉人たちのこうした数々のエピソードが残されているところを見ると、偉人たちの功績には、少なからず「コーヒーの力」が影響していたともいえそうです。
これら偉人たちに共通するのは、「コーヒーが創造力や思考力、決断力に影響を与える存在だった」ことと「単なる嗜好品ではなく人生の必需品になっていた」ことです。
ベートーヴェンは、「一杯のコーヒーはインスピレーションを与え、一杯のブランデーは苦悩を取り除く」という格言も残しています。
世界の歴史を動かした数々の芸術や思想、または政治決断の裏には、いつもコーヒーが寄り添っていたのかもしれません。