コーヒーノキ属に分類される120種類以上の植物の中で、飲用目的で栽培され流通しているのは全生産量の60%程度を占める「アラビカ種」とそれに次ぐ40%程度の生産量の「カネフォラ種」の2種類だけです。
本記事では、コーヒーの三大原種やコーヒーの種と品種の違い、アラビカ種とカネフォラ種の主要栽培品種について、それぞれの特徴と主な栽培地までを詳しくまとめて紹介しました。
コーヒーの三大原種
コーヒーノキ属に分類される植物は、現在120種以上(※1)確認されていますが、その中で飲用目的で栽培され流通しているのは全生産量の60%程度を占める「アラビカ種」とそれに次ぐ40%程度の生産量の「カネフォラ種」の2種だけです。
カネフォラ種とはいわゆる「ロブスタ」のことで、ロブスタは、カネフォラ種の品種の1つにすぎないのですが、その知名度が高く、カネフォラ種の代名詞になっています。
その他「リベリカ種」も含めて「三大原種」と呼ばれていますが、リベリカ種は、商用としては扱われていません。
また近年、アラビカ種の親とされる「ユーゲニオイデス種」(※2)など新たに注目を集めている種もあります。
※1:コーヒーノキ属に分類される植物の数は、研究や分類方法によって多少の変動はありますが、一般的には120種類以上とされています。
かつては数十種と言われていた時期もありましたが、近年の植物学的調査や遺伝子解析が進んだことで、多くの固有種が新たに発見・分類されました。
※2:現在のアラビカ種は、カネフォラ種の祖先を父方に、ユーゲニオイデス種の祖先を母方とする、異種自然交配によって誕生しました。
コーヒー栽培の歴史(アラビカ種とカネフォラ種の伝播)については、別の記事で紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。↓こちらの記事
コーヒーの種と(栽培)品種とは

植物(生物)を分類する基準となる単位は「種」で、この種の下にもう少し小さな分類群として「品種」があります。
植物学上「種」としてアラビカ種やカネフォラ種があり、「品種」としてティピカやブルボン、ロブスタなどがあります。従って「ブルボン種」という言い方は正しくありません。
アラビカ種とカネフォラ種(種の違い)では、その味わいはかなり違いますが、栽培品種どうしでの味わいの違いは、種の違いほど大きくありません。
アラビカ種
アラビカ種は、世界中で最も多く栽培され、低地から高地にかけて栽培可能ですが、サビ病等の病害虫に弱い種です。
一般にカネフォラ種に比べ、風味、香りともに優れており、ストレートでの飲用に適しています。
◎ 主な(栽培)品種
ティピカ、ブルボン、ゲイシャ、マラゴジッペ、カトゥーラ、SL28、SL34、ムンドノーボ、ハイブリッドティモール(アラビカ種×カネフォラ種)、カトゥアイ、パカマラなど
カネフォラ種
カネフォラ種は、低地で湿潤な土地で栽培され、アラビカ種に比べ病害虫にも強い種です。
麦茶のような特有の香ばしさと、酸味がほとんどなく苦味が強いのが特徴で、缶コーヒーやインスタントコーヒーなどの原料に使われることが多く、アラビカ種に加えてブレンドに利用されることもあります。
◎ 主な(栽培)品種
ロブスタ、コニロンなど
次に、カネフォラ種の主な栽培品種について、それぞれの特徴と主な栽培地を紹介します。
| 品種 | 特徴 | 主な栽培地 |
|---|---|---|
| ロブスタ | 病害虫に強く、低地でも栽培しやすく収量も高い。カフェイン含有量が高く、苦味が強い。 | ベトナム、インドネシア |
| コニロン | ブラジルで独自発展したカネフォラ種で、ロブスタよりも風味がややマイルドで、苦味が控えめ。 | ブラジル |
アラビカ種の主な栽培品種

アラビカ種の栽培品種は、土地に根付いている「在来種」、在来種から生まれた「突然変異種」、品種を掛け合わせた交配種に分類されます。
さらに交配種には、自然界で偶然掛け合わさった「自然交配種」、人が手を加えた「人工交配種」があります。

アラビカ種の主な栽培品種について、それぞれの特徴と主な栽培地を紹介します。
在来種
ティピカ
特徴
…二大原品種の一つ。収量はやや低めで、病害虫に弱い。味は広く好まれる。
1723年にフランス人将校ガブリエル・ド・クリューが、パリ植物園にあった数本の苗木をカリブ海のマルティニーク島へ持ち出し、航海の苦難に耐えた数株の栽培に成功します。ここから他のカリブ海の国々へ、さらに中南米諸国へと広まっていきました。
主な栽培地
…中南米諸国、ほか世界各地
ゲイシャ
特徴
…エチオピア原産の野生種で、高級スペシャルティコーヒーの代表格。ジャスミンのような独特の香りと、柑橘系の明るい酸味。
主な栽培地
…パナマ、エチオピア
突然変異種
ブルボン
特徴
…二大原品種の一つ。ティピカの突然変異種ですが、ティピカよりは丈夫で、収量も多い。
1715年にフランスの商人によってイエメンからブルボン島(現在のレユニオン島)に伝えられたアラビカ種のうち現地で突然変異したものがその後、現在のケニア、タンザニアに移植され、後に中南米にも広まっていきました。
主な栽培地
…ブラジル、ほか世界各地
マラゴジッペ
特徴
…ブラジルで発見されたティピカの突然変異種。丈夫で、実も葉も大きく、非常に大粒の豆(エレファント・ビーン)だが、収量は低い。
主な栽培地
…ブラジル、メキシコ
カトゥーラ
特徴
…ブルボンの突然変異種。小型で収量が高い、中米の主要栽培品種。
主な栽培地
…コロンビア、中米諸国
SL28
特徴
…乾燥に強い。当時ケニアの Scott Laboratories(スコット研究所、現ケニア国立農業研究所)で選抜された品種で、SL=略称、28=種子選抜番号 が名前の由来。
主な栽培地
…ケニア、タンザニア
SL34
特徴
…収量が高く、高地栽培に適している。当時ケニアの Scott Laboratories(スコット研究所、現ケニア国立農業研究所)で選抜された品種で、SL=略称、34=種子選抜番号 が名前の由来。
主な栽培地
…ケニア、タンザニア
自然交配種
ムンドノーボ
特徴
…スマトラ(ティピカの突然変異種)とブルボンの自然交配種。丈夫で収量が高い、ブラジルの主要栽培品種。
主な栽培地
…ブラジル
ハイブリッドティモール(アラビカ種 × カネフォラ種)
特徴
…アラビカ種とカネフォラ種とは染色体の数が異なるため本来交配できませんが、ティモール島で発見された「ハイブリッドティモール」は、アラビカ種とカネフォラ種の自然交配種で、遺伝的にはアラビカ種ですが、カネフォラ種の丈夫さを兼ね備えていました。
このハイブリッドティモールとアラビカ種を交雑させて、様々なハイブリッドが誕生しました … アラビカ種の病害虫に対する弱さを、丈夫なカネフォラ種で補おうという発想です。
ハイブリッドティモールとカトゥーラを交雑させた「カティモール」や「コロンビア」などが有名。
主な栽培地
…東ティモール
人工交配種
カトゥアイ
特徴
…ムンドノーボとカトゥーラの交配によって作られた品種。小型で収量が高い。
主な栽培地
…ブラジル、中米諸国
パカマラ
特徴
…エルサルバドルで作られた、パカス(ブルボンの突然変異種)とマラゴジッペを交配させた品種。樹高は通常だが、粒が大きいのが特徴。
主な栽培地
…エルサルバドルなど中米諸国
まとめ
本記事では、アラビカ種の主要栽培品種について、それぞれの特徴と主な栽培地を紹介しました。
↓こちらの表で簡潔にまとめてみましたので、ぜひ参考にしてください。
● 在来種
| 品種 | 特徴 | 主な栽培地 |
|---|---|---|
| ティピカ | 二大原品種の一つ。収量はやや低めで、病害虫に弱い。味は広く好まれる。 | 中南米諸国、ほか世界各地 |
| ゲイシャ | エチオピア原産の野生種で、高級スペシャルティコーヒーの代表格。ジャスミンのような独特の香りと、柑橘系の明るい酸味。 | パナマ、エチオピア |
● 突然変異種
| 品種 | 特徴 | 主な栽培地 |
|---|---|---|
| ブルボン | 二大原品種の一つ。ティピカの突然変異種ですが、ティピカよりは丈夫で、収量も多い。 | ブラジル、ほか世界各地 |
| マラゴジッペ | ブラジルで発見されたティピカの突然変異種。丈夫で、実も葉も大きく、非常に大粒の豆だが、収量は低い。 | ブラジル、メキシコ |
| カトゥーラ | ブルボンの突然変異種。小型で収量が高い、中米の主要栽培品種。 | コロンビア、中米諸国 |
| SL28 | 乾燥に強い。当時ケニアの Scott Laboratories(スコット研究所、現ケニア国立農業研究所)で選抜された品種で、SL=略称、28=種子選抜番号が名前の由来。 | ケニア、タンザニア |
| SL34 | 収量が高く、高地栽培に適している。当時ケニアの Scott Laboratories(スコット研究所、現ケニア国立農業研究所)で選抜された品種で、SL=略称、34=種子選抜番号 が名前の由来。 | ケニア、タンザニア |
● 自然交配種
| 品種 | 特徴 | 主な栽培地 |
|---|---|---|
| ムンドノーボ | スマトラ(ティピカの突然変異種)とブルボンの自然交配種。丈夫で収量が高い、ブラジルの主要栽培品種。 | ブラジル |
| ハイブリッドティモール | アラビカ種とカネフォラ種の自然交配種で、遺伝的にはアラビカ種ですが、カネフォラ種の丈夫さを兼ね備えていました。 このハイブリッドティモールとカトゥーラを交雑させた「カティモール」や「コロンビア」などが有名。 | 東ティモール |
● 人工交配種
| 品種 | 特徴 | 主な栽培地 |
|---|---|---|
| カトゥアイ | ムンドノーボとカトゥーラの交配によって作られた品種。小型で収量が高い。 | ブラジル、中米諸国 |
| パカマラ | パカス(ブルボンの突然変異種)とマラゴジッペを交配させた品種。樹高は通常だが、粒が大きいのが特徴。 | エルサルバドルなど中米諸国 |


