コーヒーの味わいや香りは産地によっても大きく異なります。
この記事では、世界のコーヒー産地とその特徴について詳しく解説し、コーヒーの楽しみ方を広げる手助けをします。
各産地のコーヒーの特徴や違いを理解することで、自分の好みに合ったコーヒーを見つけることができるでしょう。
世界のコーヒー産地
コーヒーの栽培に適した地域「コーヒーベルト」
コーヒーの主な栽培地域は赤道を中心として北回帰線と南回帰線との間に分布していて、 これを「コーヒーベルト」と呼んでいます。
この地域は、気候や土壌がコーヒーの栽培に適しており、各国の特性が反映された多様なコーヒー豆が生産されています。
それぞれの地域には独自の気候条件や栽培方法があり、これがコーヒーの風味や香りに大きく影響を与えています。
栽培地における環境条件の違いがコーヒーの味に影響する
コーヒーの味が産地によって違うのは、気候や土壌のような栽培環境の違いが影響しているからです。つまり、その「栽培地」における栽培環境の違いであって「生産国」によって違うのではありません。
例えば、同じコロンビア産のコーヒーでも、高地で栽培されたコーヒーと低地で栽培されたコーヒーとでは栽培条件が全く違うため、味も全く変わってきます。
逆に、隣接した国どうしでは生産「国」が違っても、「栽培地」の環境が似ていれば、味も似たような印象になります。
また、気候や土壌のような栽培環境のほかにも、コーヒーの「品種」や「精製方法」の違いでも味や香りが変わってきます。
産地ごとに違う格付けの方法や収穫時期
格付けの方法
格付けの方法に統一した国際基準はなく、各生産国の生産環境などにより独自に行われています。
商品流通上、重要なものは次のように大別されます。
格付けの方法 | 生産国名 |
---|---|
標高による | 中米各国、メキシコ |
スクリーンサイズによる | コロンビア、ケニア、タンザニア |
欠点数による | エチオピア、ペルー |
スクリーンサイズと欠点数による | ブラジル、カリブ海諸国、インドネシア |
収穫時期
コーヒーの花は乾季後の雨を合図に咲きます。
赤道に近い産地(例えば、インドネシア、ケニア、コロンビアなど)では雨季と乾季の区別が明確でないため、収穫が年中可能であったり、ピークが年2回あったりします。
一方、赤道から離れた産地では雨季と乾季が明確に分かれているため、短期集中的な収穫期が1回あります。
主なコーヒー産地とその特徴
それぞれのコーヒー産地には、特有の気候条件や栽培方法があり、各国の特性が反映された独自の特徴があります。
以下に、主要なコーヒー産地とその特徴をまとめました。
アジア・オセアニア
アジア・オセアニア地域では、インドネシア、ベトナム、ラオス、パプアニューギニア、東ティモール、インド、ハワイ(米国)などが有名なコーヒー産地です。
ハワイ(米国)のコナコーヒーは、爽やかな酸味と適度なコクが特徴で、非常に人気のある高価なコーヒーの一つです。
インドネシア
生産量のほとんどがカネフォラ種で、主にナチュラルとウォッシュドで処理されています。
スマトラ島北部の「リントン」や「アチェ」などの雨の多い地域で生まれた独自の方法 (スマトラ式)で精選されるアラビカ種のコーヒーは、「マンデリン」と呼ばれ、なめらかな苦味と深いコクがあり、日本では特に人気があります。
ジャワ島で生産されるカネフォラ種のコーヒー豆「ジャワ・ロブスタ」は、苦味に特徴があり、ブレンド用によく使われることで知られています。
また、ジャコウネコの糞から取れる希少な「コピ・ルアック」も有名です。
- 主な精選方法 ナチュラル / ウォッシュド / スマトラ式
- 格付けの方法 スクリーンサイズ、欠点数による
- 収穫時期 メイン:3月中旬〜8月 / サブ:11月中旬〜3月中旬
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 6位 16,396t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
ベトナム
コーヒー豆の生産量で世界第 2位(2024年度)のベトナムですが、栽培されているほとんどがカネフォラ種(ロブスタ)です。
日本のコーヒー生豆輸入量でも 2位(2024年度)のベトナムの豆が、一般的な市場であまり見かけないのは、主に缶コーヒーやインスタントコーヒーなどの原料として使われているためです。
ベトナムでは、この苦みの強いカネフォラ種(ロブスタ)の豆を使い、コンデンスミルク(練乳)を入れたカップの上に独自のフィルターを載せて濃く抽出するという独特の方法で飲まれています。
- 主な精選方法 ナチュラル
- 格付けの方法 スクリーンサイズ、欠点数による
- 収穫時期 11月〜1月
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 2位 97,331t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
アフリカ
アフリカでは、エチオピア、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダなどが有名なコーヒー産地です。
エチオピア
エチオピアは、アラビカ種の原産地で、現在も野生種が自生しています。
アラビア半島(イエメン)にあった、かつての港「モカ港」から出荷されたことに由来して、イエメンとエチオピアの2国で生産されるコーヒーを「モカ」と呼びます。
「モカコーヒー」は日本でも人気ですが、そのフルーティーで華やかな香りとコク、上品な酸味から「コーヒーの貴婦人」と呼ばれることもあります。日本のみならず世界中で愛されています。
エチオピアには「カリオモン(Kariomon)」と呼ばれる、日本の茶道にもよく似た「コーヒーセレモニー」があります。
客人の前で生豆を煎るところから始め、臼と杵で豆を摺り潰して、ポットで直接煮出して提供します。3杯飲むことが正式であることから、2時間以上かかることもあります。
このセレモニーは、女性がとり行うもので、エチオピアでは結婚前の女性が身につけるべき作法の一つとされています。
- 主な精選方法 ナチュラル / ウォッシュド
- 格付けの方法 欠点数による
- 収穫時期 9月〜2月
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 4位 21,036t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
ケニア
ケニアのコーヒーは、ケニアの最高峰であるケニア山周辺の高地などを主要な栽培地としています。
山地特有の寒暖差の大きな気候に加え、雨季が2回あり、降水量も多く、土壌には豊富なミネラルが含まれ、水はけがよく、コーヒー栽培に適した環境です。
そのコーヒーは、明るくジューシーな酸味で、しっかりとしたコクと芳醇で重厚な風味が特徴です。
ケニアを代表する栽培品種である SL28 や SL34 は、特徴的なジューシーな酸味を持ちます。
日本のコーヒー生豆輸入量は 17位(2024年度)ですが、スペシャルティコーヒーの市場で根強い人気があります。
- 主な精選方法 ウォッシュド
- 格付けの方法 スクリーンサイズによる
- 収穫時期 メイン:11月〜2月 / サブ:6月〜7月中旬
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 17位 764t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
中米・カリブ海
中米・カリブ海地域では、メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ジャマイカなどが有名なコーヒー産地です。
ジャマイカのブルーマウンテンは、世界で最も高価なコーヒーの一つで、香り、酸味、コクのバランスがとれた軽やかな風味が特徴です。
グアテマラ
グアテマラのコーヒーの産地は、「アンティグア」「ウェウェテナンゴ」「コバン」「フライハーネス」など、標高の高い山岳地帯が多い南部の地域に点在しており、上質なコーヒーの栽培地域として知られています。
そのコーヒーは、甘い香りとすっきりした酸味、爽やかな後味が特徴です。
グアテマラのコーヒーは、栽培地域の標高によって格付けされています。
もっとも高いグレードが「SHB」(ストリクトリー・ハード・ビーン)で、標高 1,300m 以上の生産地で収穫されたコーヒー豆に与えられる等級です。
- 主な精選方法 ウォッシュド
- 格付けの方法 標高による
- 収穫時期 8月〜3月中旬
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 5位 19,068t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
コスタリカ
コスタリカは、カリブ海と太平洋の2つの海と面しており、多くの生産地域は、高地で、安定的な降水量、火山地帯の肥沃な土壌と、コーヒー栽培に適した環境がそろっています。
コスタリカでは、品質が下がるのを防ぐため、低品質であるロブスタなどの生産は禁止されており、高品質のアラビカ種のみを栽培しています。
コスタリカでは、コーヒーの精製方法として「ハニープロセス」が多く採用されています。
ハニープロセスは、コーヒーチェリーの果肉を除去した後、ミュシレージ(粘液質)をどの程度残して乾燥させるのか(ミューシレージの残し具合によって、「〇〇ハ二―」と呼んで区分されます)によって、コーヒー豆の色や味が大きく変わってきます。
この精製方法によって、苦味や酸味とは別に上品な甘みのある、コスタリカ特有のコーヒー豆が作り出されています。
- 主な精選方法 ウォッシュド / ハニープロセス
- 格付けの方法 標高による
- 収穫時期 11月〜3月
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 13位 1,487t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
南米
南米地域では、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルーなどが有名なコーヒー産地です。
ブラジル
コーヒー豆の生産量、日本のコーヒー生豆輸入量、ともに圧倒的1位を誇るコーヒー大国ブラジルは、その大半が「コーヒーベルト」に属しており、広大な平地に効率的な大規模農園が広がるコーヒー大国です。
平地に多く見られる大規模農園では機械化が進んでいる一方で、山岳地帯の小規模農園では手摘みによる収穫を行っています。
世界の生産量のおよそ3割を占めるブラジルの干ばつや霜害は、コーヒー市場価格に大きな影響を及ぼすことはよく知られています。
ブラジルでは、主にアラビカ種が栽培されています。
そのコーヒーは、甘みを伴った、柔らかな苦味と控えめな酸味が特徴です。全体的にまろやかで、バランスの良い味わいになります。
全体的にバランスが良く飲みやすいブラジルのコーヒーは、ブレンドコーヒーのベースとして利用されることも多いコーヒーです。
ブラジルで栽培されているカネフォラ種(ロブスタ)は「コニロン」と呼ばれています。
- 主な精選方法 ナチュラル
- 格付けの方法 スクリーンサイズ、欠点数による
- 収穫時期 5月〜8月
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 1位 130,210t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
コロンビア
コロンビアは、南米大陸の北西部に位置し、コーヒーの栽培地域は、主にアンデス山脈の斜面に広がっており、北部と南部では気候が異なるため、それぞれの地域において独自の風味特性を持つコーヒーを生産しています。
そのコーヒーは、甘い香りとしっかりした酸味とコク、重厚な風味が特徴です。
コロンビアでは主にアラビカ種のコーヒーが栽培されています。
赤道直下という立地から、各栽培地域は年に2回の収穫期を持ち、コロンビアは年間を通じてコーヒーの収穫が可能です。これにより常に新鮮なコーヒー豆を供給することができます。
- 主な精選方法 ウォッシュド
- 格付けの方法 スクリーンサイズによる
- 収穫時期 メイン:10月〜1月 / サブ:4月〜6月
- 日本のコーヒー生豆輸入量ランキング 3位 35,858t(2024年度)
※収穫時期は、年によって前後する場合があります。
※日本のコーヒー生豆輸入量ランキングは、全日本コーヒー協会 のホームページ内の調査データ情報に基づいています。
特定銘柄のコーヒー
「ブルーマウンテン」や「ハワイコナ」など特定の商品には、その名称を付けるために必要な定義が設けられています。こうしたものを「特定銘柄」と呼んでいます。
「特定銘柄」は、全日本コーヒー公正取引協議会が制定する「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約」でその定義が定められています。
以下に、「特定銘柄」のコーヒーをまとめてみました。
名称 | 定義 |
---|---|
ブルーマウンテン | ジャマイカ・ブルーマウンテン地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
ハイマウンテン | ジャマイカ・ハイマウンテン地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
ジャマイカ | ジャマイカにて生産されたアラビカ種コーヒー豆のうち、上記以外のものをいう。 |
クリスタルマウンテン | キューバにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
グアテマラアンテイグア | グアテマラ・アンテイグア地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
コロンビアスプレモ | コロンビアにて生産された同国輸出規格に基づくアラビカ種コーヒー豆・スプレモをいう。 |
モカハラー | エチオピア・ハラー地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
モカマタリ | イエメンにて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
キリマンジャロ | タンザニアにて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。ただし、ブコバ地区でとれるアラビカ種コーヒー豆は含まない。 |
トラジャ | インドネシアのスラウェシ島トラジャ地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
カロシ | インドネシアのスラウェシ島カロシ地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
ガヨマウンテン | インドネシアのスマトラ島タケンゴン地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
マンデリン | インドネシアの北スマトラ州及びアチェ州(タケンゴン周辺のガヨマウンテン生産地区を除く)にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
ハワイコナ | アメリカのハワイ州南コナ地区及び北コナ地区にて生産されたアラビカ種コーヒー豆をいう。 |
まとめ
コーヒーの産地によって、味や香りは大きく異なります。
気候や土壌のような栽培環境のほかにも、コーヒーの品種や精製方法の違いでも味や香りは変わってきます。
それぞれの特徴を理解することで、自分の好みに合ったコーヒーを見つけることができるでしょう。
テーブルに広げた世界地図で産地を確認しながら、コーヒーを楽しんではいかがでしょうか。
コーヒーの楽しみ方は無限大ですので、ぜひ様々な産地のコーヒーを試してみてください。