コーヒーの香りや味わいを決めるいくつかの要素のうち、焙煎度は、非常に重要な要素となります。
本記事では、焙煎や焙煎度の基本から、焙煎度による味わいの違い、焙煎度とカフェインの関係、自分好みの焙煎度を見つけるためのヒントなどを、初心者にもわかりやすく解説します。
コーヒーの焙煎と焙煎度の基本
焙煎とは?
コーヒーの生豆(なままめ)を乾煎りすることを「焙煎」といいます。
コーヒーは生豆の状態では青臭いだけで、味も香りもありません。
生豆を加熱することで、化学変化を起こさせることで、コーヒー独特の味や香りが引き出されます。
焙煎時の熱の加え方や加熱時間によって、引き出される風味が変わるため、コーヒーの香りや味わいは焙煎に大きく左右されます。
焙煎は生豆の選び方に次いで、コーヒーの味を決める重要な要素といえるでしょう。
焙煎度とは?
焙煎がどの程度進んだかを示す指標として、一般的に色が用いられます。
この指標を「焙煎度」といい、そのコーヒーがどのくらい酸味があるか、あるいは苦いかの目安にもなります。
日本では、浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎りといった分類や、ライトローストからイタリアンローストまでの8段階の分類がよく使われます。
ただし、これらの分類には、明確な基準はなく、地域や店によって違いのある、あくまで主観的な区分ですので、注意が必要です。
- ライトロースト(Light roast)
- シナモンロースト(Cinnamon roast)
- ミディアムロースト(Medium roast)
- ハイロースト(High roast)
- シティロースト(City roast)
- フルシティロースト(Fullcity roast)
- フレンチロースト(French roast)
- イタリアンロースト(Italian roast)
この8段階の分類については、とても興味深くて、詳しい記述がありますので、少し長文にはなりますが、引用させてください。
なお、下線は引用者によります。
この8段階の分類は1920~30年代に、北米のコーヒー取引商の間で用いられていた慣用的な名称を集めたもので、特別はっきりとした線引きの基準があったわけではないようです。
引用元: 旦部幸博.コーヒーの科学.講談社ブルーバックス,2016,171‐172p.
一般に焙煎度は、国や地域ごとに好みに一定の傾向が見られるのですが、その当時、世界でもっとも浅煎りだったのはイギリスのライトローストで、1ハゼ直前で煎り止めたもの。
一方、フランス(フレンチロースト)は表面に油が滲み出るくらい、イタリア(イタリアンロースト)は炭っぽくなるほどの深煎りだったとされています。この頃、ドイツはフランスと同程度、北欧はイタリアよりも深煎り。
アメリカは地域差が大きく、ボストンや西海岸ではシナモンやライト、東部はやや深めでハイ~フルシティ、南部がもっとも深くてフレンチ以上でした。
ちなみにシティローストの「シティ」とは、これがもっとも好まれたニューヨーク(ニューヨーク・シティ)のことです。
1ハゼの終わったくらいのミディアムローストが、アメリカ全体では文字通り「中間」くらいの焙煎度で、これが今でも伝統的な「アメリカンロースト」として扱われています。
焙煎度がもたらす味わいの違い
一般的に、浅煎りでは、爽やかな酸味が特徴で、豆本来の風味が感じられます。
中煎りになると、酸味と苦味のバランスが取れた味わいに変化し、深煎りになると、苦味が際立ち、コクが強まります。
焙煎度の種類と特徴

ライトとシナモンロースト
まだ焙煎が浅い段階で、青臭さも残り、一般的にはあまり飲用向きではないとされています。
ミディアムロースト
ミディアムローストは、、浅煎りで、まだ苦味より酸味を強く感じる、フルーティで軽やかな味わいが特徴です。
ペーパードリップ、フレンチプレスに向いています。
ハイロースト
ハイローストは、、浅めの中煎りで、酸味と苦味の中間で、コクも出てきます。
ペーパードリップ、フレンチプレス、サイフォンに向いています。
シティロースト
シティローストは、深めの中煎りで、コクと酸味、やや苦味のバランスがよく、香ばしさが増します。
日本では最も人気のある一般的な焙煎度です。
ペーパードリップ、フレンチプレス、サイフォンに向いています。
フルシティロースト
フルシティローストは、中深煎りで、酸味はほとんどなく、強めの苦味と重厚なコクが楽しめます。
シティローストとともに、日本では最も人気のある一般的な焙煎度です。
コンビニ・コーヒーも、このあたりの焙煎度ではないでしょうか。
ペーパードリップ、サイフォン、マキネッタ、アイスコーヒーに向いています。
フレンチロースト
フレンチローストは、深煎りで、非常に苦くて、スモーキーな香りが特徴です。
マキネッタ、エスプレッソ、カフェオレ、アイスコーヒーに向いています。
イタリアンロースト
イタリアンローストは、最も深煎りで、刺激的な苦味と焦げやスモーキーな香りが特徴です。
マキネッタ、エスプレッソ、カプチーノ、アイスコーヒーに向いています。
焙煎度 | 豆の色(目安) | 味わいの特徴 | おすすめの飲み方 |
---|---|---|---|
ミディアムロースト | 明るめの茶褐色 | まだ苦味より酸味を強く感じる | ドリップ、フレンチプレス |
ハイロースト | 標準的な茶褐色 | 酸味と苦味の中間、コクが出てくる | ドリップ、フレンチプレス、サイフォン |
シティロースト | やや濃い茶褐色 | コクと酸味、やや苦味のバランスが良好 | ドリップ、フレンチプレス、サイフォン |
フルシティロースト | 深い茶色 | 強めの苦味とコク、酸味はほとんどなし | ドリップ、サイフォン、マキネッタ、アイスコーヒー |
フレンチロースト | 黒に近い茶色 | 非常に苦くスモーキーな香り | マキネッタ、エスプレッソ、カフェオレ、アイスコーヒー |
イタリアンロースト | ほぼ黒 | 刺激的な苦味と焦げやスモーキーな香り | マキネッタ、エスプレッソ、カプチーノ、アイスコーヒー |
焙煎がどの程度進んだかを示す指標(焙煎度)として、一般的に色が用いられることが多いのですが、この豆の色には明確な基準があるわけではないので、あくまで地域や店によって違いのある主観的な区分になります。
焙煎がどの程度進んだかは、時間と温度、豆の色や外観、香り、ハゼ音、歩留まり(生豆を焙煎した際の重量変化)などから総合的に判断することになります。
そのあたりのことは、また別の記事で詳しく書いてみたいと思います。
焙煎による成分の変化
焙煎により、水分その他の諸成分が物理的・化学的に変化するため、最大20%程度の目減りが起こります。
成分 | 生豆(%) | 焙煎豆(%) | 焙煎による変化 |
---|---|---|---|
水分 | 10~13 | ~3 | 熱により減少する 焙煎により別途、発生する |
焙煎によって減少する成分
成分 | 生豆(%) | 焙煎豆(%) | 焙煎による変化 |
---|---|---|---|
ショ糖(砂糖) | 5~8 | ~3 | ほぼ消失する |
アミノ酸 | ~2 | ‐ | ほぼ消失する |
クロロゲン酸 | 5~10 | ~5 | 焙煎度に応じて減少する |
焙煎によって生じる成分
成分 | 生豆(%) | 焙煎豆(%) | 焙煎による変化 |
---|---|---|---|
褐色色素 | ‐ | ~20 | 焙煎により生じる |
コーヒーの色は、この「褐色色素」から形成されます。
焙煎度とカフェインの関係
成分 | 生豆(%) | 焙煎豆(%) | 焙煎による変化 |
---|---|---|---|
カフェイン | 1~2 | 1~2 | あまり変化しない |
焙煎度が深くなるほど、豆の質量は減りますが、カフェインは熱に強いため大きくは減少しません。
まとめ|焙煎度の理解を深める
自分好みの焙煎度を見つける
本記事で、焙煎度の理解を深めたら、まずは先入観を捨てて、浅煎りから深煎りまでコーヒーを飲み比べてみることを、おすすめします。
試しに飲んでみた浅煎りコーヒーのフルーティーな酸味が、以外にも自分に合っていた、ということもあります。
おいしいと感じるコーヒーに出会えたら、生産国名や銘柄名だけでなく、その焙煎度を確認することで、自分好みのコーヒー豆を選ぶためのヒントになるはずです。
コーヒーの味わいの特徴と焙煎度の関係
一般的に、コーヒーの味わいの特徴と焙煎度の関係は、次のようになります。
好みのコーヒー豆を選ぶ時の参考にしてください。
味わいの特徴 | 焙煎度 |
---|---|
酸味のあるフルーティーなコーヒー | ミディアムロースト |
酸味と苦味のバランスがとれた味わいのコーヒー | ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト |
しっかりとした苦味とコクのあるコーヒー | フレンチロースト、イタリアンロースト |