ハンドドリップとは、専用のフィルターとドリッパーにコーヒー粉をセットし、手動でコーヒーを淹れる方法で、日本ではもっともポピュラーな抽出方法です。
微妙な手加減がコーヒーの味を決めるハンドドリップは、淹れ方次第で驚くほど味が変わります。
コーヒーメーカーを使わず、すべてを手作業で行うため、注ぐお湯の量や温度、スピードなどを、自分好みに調節(コントロール)できる点が大きな魅力です。
本記事では、これからハンドドリップを始めたい方に、基本的な知識から、必要な器具や目安となるレシピ、一般的な淹れ方の手順、おいしく淹れるためのポイントなどをご紹介します。
ハンドドリップとは
ハンドドリップとポア・オーバー
ハンドドリップとは、専用のフィルターとドリッパーにコーヒー粉をセットし、コーヒーメーカーなどを使わず手動でコーヒーを淹れる方法で、お湯の量や温度、注ぐスピードなどを自分好みに調節(コントロール)できる点が大きな魅力です。
日本で言うところのハンドドリップコーヒーは、英語では hand drip coffee ではなく、pour over(ポア・オーバー:上から注ぐ)coffee と表現するのが一般的のようです。
コーヒーの味を変える要因
ハンドドリップは日本ではもっともポピュラーなコーヒーの淹れ方ではありますが、味が変わる要素が非常に複雑で、慣れるまではなかなか抽出が安定しません。
ハンドドリップによる抽出が難しい理由の1つは、コーヒーの味を変える要因(※)の一つである「お湯と粉の接触時間」がよく分からない点にあります。
※ コーヒーの味を変える要因
1.どんなコーヒーを使うか(生豆、焙煎度などの要因を含む)
2.どんな水を使うか
3.お湯の温度
4.粉の挽き具合
5.お湯と粉の接触(抽出)時間
6.お湯と粉の比率
このあたりの「抽出の原理と様々な抽出方法」についての詳細は、別の記事で紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。↓こちらの記事
ネルフィルターとペーパーフィルター
ドリップコーヒーを淹れる際のフィルターには、主にネルとペーパーの2種類があります。
ネル(布)フィルターは、コーヒーの油分が適度に抽出されるため、深みとコクがあり、とろりとした滑らかな舌触りになります。
一方、ペーパー(紙)フィルターは、コーヒーの微粉や油分を吸着しカットするため、すっきりとしたクリアな味わいになります。
現在、家庭でコーヒーを淹れる方法として一般に普及しているのは、ペーパーフィルターです。
それはペーパーフィルターが、抽出後コーヒー粉ごと捨てるだけで後片付けがとても簡単なのに対し、ネルフィルターは、抽出後のネルの後片付けや保管が面倒で手間がかかる(※)ことがその理由として考えられます。
※ 面倒で手間がかかる … 使用後のネルは洗ってから、乾燥させないように水に浸して冷蔵又は冷凍保管する必要がある。
ただし、とろりとした滑らかな舌触りで、深みとコクを感じられるネルドリップ(特に深煎り)コーヒーは、現在でも老舗の喫茶店やコーヒー愛好家の方々に根強い人気があります。
ペーパードリッパーの種類とその特徴
ドリッパーにより、その構造(形状、穴の数や大きさ、リブ(※)の形状など)が異なるため、お湯がドリッパー内に滞留する時間、ドリッパーからサーバーへのお湯の抜け方が変化し、それぞれその味わいに特徴が出ます。
※ リブとは … ドリッパーの内側に付いている溝のことで、ペーパーフィルターがドリッパーに密着するのを防ぎ、間に空気が通る空間(抜け道)をつくります。
台形のドリッパー
台形ドリッパーの中でも、穴の数や大きさは種々ありますが、一般的に円錐形に比べると穴が小さく、お湯がある程度ドリッパー内に滞留する「浸漬式の要素が強い」構造になっているため、比較的どっしりとした味わいになる傾向にあります。
主な台形ドリッパー:メリタとカリタ
外見上の大きな違いは、メリタ式は「1つ穴」、カリタ式は「3つ穴」であるということです。
各メーカーの推奨する抽出方法では、ともに高温のお湯を用いるところは同じですが、メリタ式ではお湯を「一気に注ぐ」、カリタ式ではお湯を「数回に分けて注ぐ」という違いがあります。
◎ メリタ式のドリッパー
世界で初めてペーパードリッパーを開発した、ドイツのメリタ社が製造販売しているメリタ式のドリッパーには、小さな穴が1つしかないため、お湯の抜けが遅く、ドリッパー内に滞留するため、お湯と粉の接触時間が長くなる(浸漬式の要素が強い)ので、どっしりとした味わいになります。
◎ カリタ式のドリッパー
カリタ式のドリッパーには、小さな穴が3つありますが、台形状であるため、円錐形に比べるとお湯の抜けはややゆっくりではあるものの、透過式の要素がメリタ式よりはあり、ボディ感のある味わいになります。
円錐形のドリッパー
円錐(えんすい)形ドリッパーは台形に比べると穴が大きく、ドリッパーの中心に集まったお湯が均一にそのまま下に落ちる(ネルフィルターに近い)構造になっているため、比較的すっきりとした味わいになる傾向にあります。
自分好みの味に仕上げるためには、注ぐお湯の量やスピードをコントロールする必要があるので、比較的「中級者以上向け」といえるかもしれません。
主な円錐形ドリッパー:ハリオとコーノ
外見上の大きな違いは、ハリオ式のドリッパーは「リスパイラル状のリブが上まで」あり、コーノ式のドリッパーは「短いリブが下の方にだけ」あるということです。


◎ ハリオ式のドリッパー
ハリオ式のドリッパーはスパイラル状のリブが上まであるため、ペーパーフィルターがドリッパーに密着せずに空気が通る抜け道が多く、お湯の抜けが速いので、雑味などが出にくく、透明感のあるすっきりとした味わいになります。

◎ コーノ式のドリッパー
コーノ式のドリッパーは短い直線状のリブが下の方にだけあり、上部はペーパーフィルターが密着して、注いだお湯がサイドから横もれしないため、ハリオ式に比べて、お湯の抜けが少し遅くなるので、すっきりとしつつもボディ感のある味わいになります。

ハンドドリップに必要な器具
ハンドドリップによるコーヒーの抽出に必要な器具類を準備します。
最低限、ドリッパーとペーパーフィルターさえあれば、コーヒーを淹れることができます。
ドリップコーヒーを淹れる際に使用するフィルターは、ネル(布)とペーパー(紙)の他にも金属製のフィルターなどいくつかの種類がありますが、今回はペーパーフィルターを使った「ペーパードリップ」についてご紹介します。
〇 コーヒー粉
〇 ドリッパー … 最低限必要です。
〇 ペーパーフィルター … 最低限必要です。必ずドリッパーの形状に合わせて選びます。
〇 サーバー … 耐熱メジャーカップでも代用できますし、コーヒーカップやマグカップへダイレクトに抽出してもOKです。
〇 ドリップポット … 専用の細口ポットが無くてもお湯は注げますが、あれば注ぐお湯の量やスピードをコントロールしやすくなります。
その他
〇 スケール(はかり)
〇 コーヒーカップ
目安のレシピ(お湯と粉の比率)
ハンドドリップで淹れる際の目安となるレシピ(お湯と粉の比率※)を次にまとめておきます。
※ お湯と粉の比率 … コーヒー粉の量が多くなるほど、より濃くなります。
※ コーヒー抽出量に対する粉の量(目安となるレシピ)
| コーヒー抽出量 | 粉の量(あっさり) | 粉の量(★基本) | 粉の量(濃いめ) |
|---|---|---|---|
| 150ml(カップ1杯分) | 10g | ★12g | 14g |
| 200ml(マグカップ1杯分) | 13g | ★16g | 19g |
| 300ml(カップ2杯分) | 20g | ★24g | 28g |
ペーパードリップには、中細挽き~中挽きのコーヒー粉が適しています。
難しく考えずに、まずは基本の量から始めて、そこから自分だけのおいしいコーヒーの淹れ方(レシピ)を見つけていきましょう。
一般的な淹れ方の手順
1.器具の準備
ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、適量のコーヒー粉を入れます。
やかん等で沸騰させたお湯を専用のドリップポットに移します。
このとき、サーバーとコーヒーカップにもお湯を注いで、あらかじめ温めておきます。

2.蒸らし(1回目の注湯)
コーヒー粉全体に少量のお湯を注いで、しばらく(30秒ほど)おきます。
この工程で粉内部の炭酸ガスを抜き、成分を抽出しやすくします。
注湯を止めると粉がふくらんできます。そのふくらみが止まって、ツヤが無くなってきたら2回目の注湯に移ります。

3.抽出
コーヒー粉の中心に2回目の注湯をし、泡が出てきたら、お湯がフィルターに直接当たらないように、500円玉くらいの円を描くように細くゆっくり注湯していきます。
コーヒー粉の中央部分が、ややまわりよりもへこんだタイミングで、注いだお湯が落ちきる前に、次のお湯を注ぎます。

お湯を数回に分けて注ぎ、必要量がサーバーに落ちたら抽出の完了です。
温めたコーヒーカップに注いだらドリップコーヒーの出来上がり。

おいしく淹れるためのポイント
ハンドドリップによる抽出においては、お湯の注ぎ方が味に大きく影響します。
お湯を一度に注ぐときと、数回に分けて注ぐとき、さらに点滴のように一滴一滴注ぐときでは、それぞれ同じコーヒーとは思えないほど味が変わります。
一度にドバッと注ぐほど浸漬式に近づき、チビチビと少量ずつ注ぐほど透過式らしい成分の濃縮が起こります。
一般的な傾向として、日本では深煎り豆には成分を濃縮する(お湯の抜けがよいフィルターを使ってチビチビと少量ずつ注ぐ)淹れ方で、浅煎りや中煎りではそこまで極端に濃縮せず、3~4回に分けて注ぐことが多いようです。
以下にハンドドリップコーヒーをおいしく淹れるために知っておきたい、いくつかのポイントを挙げてみます。
抽出直前に豆を挽く
香り高くて、おいしいコーヒーを楽しむために、コーヒーは粉ではなく豆の状態で購入し、抽出する直前にそのつど豆を挽くのは、基本中の基本です。
このとき、微粉の割合が増えると、比表面積(gあたりの表面積)が増える分「まずい成分」まで出やすくなるため、手間はかかりますが、挽いた粉を微粉セパレーター(コーヒーふるい)にかけて微粉を取り除くことで、ビックリするほど味が変わりますので、ぜひ試してみてください。
特に粒度のばらつきが大きいブレードグラインダー(プロペラ式ミル)には効果絶大です。
「微粉セパレーター」については、別の記事で詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。↓こちらの記事
豆の挽き具合はとても大切
コーヒー粉は、その挽き具合によって表面積が変わり、成分の引き出される速度が変化します。
一般的に、細挽きだと表面積が大きくなるため、成分の抽出効率が良くなり、味わいはドッシリとしますが、過抽出になると、苦味や渋みが強くなります。
一方、粗挽きだと表面積が小さくなるため、成分の抽出量が減り、味わいはスッキリとしますが、抽出不足になると、味が薄くなります。
ペーパードリップには、中細挽き~中挽きのコーヒー粉が適しています。
粒度には「様々な抽出方法に適した粒度」があって、別の記事でまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。↓こちらの記事
蒸らしをする
1回目の注湯でコーヒー粉全体に少量のお湯を注いで、しばらくおくことで粉内部の炭酸ガス(二酸化炭素)を抜き、成分を抽出しやすくします。
コーヒー粉の内部には焙煎時に発生した炭酸ガスがまだ残っており、少量のお湯を注ぐことでコーヒー粉はお湯に触れ、粉内部の炭酸ガスを放出し始めます。
炭酸ガスを放出させると、コーヒー粉はお湯を含みやすくなり、成分がスムーズにお湯に溶け出るようになります。
蒸らしは、2回目の注湯以降に成分が抽出されやすい状態にするための下準備の工程といえます。
Q.粉がふくらむのはなぜ?…よくふくらむ粉ほど新鮮?
コーヒー粉はお湯に触れると、粉の内部の炭酸ガスを放出し始め、みるみる大きくふくらんで盛り上がってきますが、このふくらみ方は、粉内部の炭酸ガスの量によって変わります。
その量は焙煎直後がもっとも多く、以降、次第に抜けていくため、焙煎後に時間が経つにつれて徐々に膨らみは弱くなります。抽出時の膨らみ具合が「新鮮さの証」と言われるのはこのためです。
ただし、炭酸ガスの生成量は焙煎度でも異なり、浅煎り豆だと、深煎りに比べて、新鮮でも膨らみが弱いことがありますし、また、湯温が高いと、ふくらみ方のスピードがはやく、逆に、湯温が低いと、ふくらみ方はゆるやかになります。
湯温は、浅高・深低|抽出時間は、浅短・深長が基本
一般的な傾向として、浅・中煎りはやや高温の、深煎りは低温のお湯で淹れることが多いようです。
酸味のあるフルーティーな浅煎り(ミディアムロースト)の豆は、火にかけている時間が短いので、細胞が硬い。
そのために、抽出する時のお湯の温度が低いと、豆のうま味の成分が抽出されにくい。
したがって、浅煎りの豆は、温度の高いお湯で抽出することになります
ただ、湯温が高いと、渋みやえぐみなどコーヒーの味を悪くする成分が抽出されやすい。
そこで、時間をかけずに、はやく抽出することで、そのような成分を出さないようにする。
しっかりとした苦味とコクのある深煎り(フレンチ、イタリアンロースト)の豆は、煎りが深くなるほど、長時間火にかけていることになり、豆の細胞がもろくなっている。
そのために、コーヒーの味を悪くする成分が抽出されやすい。
したがって、抽出する時のお湯の温度を低くします。
ただ、湯温が低いと、豆のうま味の成分を引き出しにくい。
そこで、少し時間をかけて抽出することで、豆のうま味の成分を引き出すことになります。
酸味と苦味のバランスがとれた中煎り(ハイ、シティ、フルシティロースト)の豆の抽出条件は、浅煎りと深煎りの中間と考えます。
以上のポイント(お湯の温度と蒸らし、抽出の時間 ※)を整理すると、次のようになります。
※ お湯の温度と蒸らし、抽出の時間
| 焙煎度 | お湯の温度 | 蒸らしの時間 | 抽出の時間 |
|---|---|---|---|
| 浅煎り(ミディアム) | 90~95℃ | 20~30秒 | 2分~2分30秒 |
| 中煎り(ハイ、シティ、フルシティ) | 85~90℃ | 30秒 | 2分30秒~3分 |
| 深煎り(フレンチ、イタリアン) | 80~85℃ | 30秒~1分 | 3分~3分30秒 |
抽出の「やめどき」が重要
いかに雑味などの「まずい成分」を出さずに、コーヒーの「おいしい成分」だけを抽出するか?ということがドリップ抽出の基本的な考え方です。
コーヒーの粉から味が出てくる時には「おいしい成分」が先に出て、抽出の後半に雑味などの「まずい成分」が出てくるので、適切なタイミングで抽出を終えることがとても重要になります。
雑味などの「まずい成分」が出てくる前に抽出を終える事で、すっきりとしたクリアな味わいのコーヒーになるわけです。
まとめ
ハンドドリップとは、専用のフィルターとドリッパーにコーヒー粉をセットし、手動でコーヒーを淹れる方法で、日本ではもっともポピュラーな抽出方法です。
微妙な手加減がコーヒーの味を決めるハンドドリップは、淹れ方次第で驚くほど味が変わります。
注ぐお湯の量や温度、スピードなどすべてを手作業で行うため、、自分好みに調節(コントロール)できる点がハンドドリップの大きな魅力です。
難しく考えずに、まずは基本から始めて、そこから自分だけのおいしいコーヒーの淹れ方(レシピ)を見つけていきましょう。




